秋から冬にかけて、新しい会社から「年末調整の書類を出してください」「前の会社の源泉徴収票もお願いします」と言われることがあります。転職した年の年末調整は、ふだんの年より1つ手順が増えます。
この記事では、転職した年の年末調整のしくみと、前職の源泉徴収票の出し方・届かないときの対処・確定申告が要る場合を、国税庁のタックスアンサーと手続きの案内だけで整理します。
答え:年の途中で就職して年末まで勤める人は、12月に在籍する会社の年末調整の対象です。前の会社で「扶養控除等申告書」を出して受け取った給与は、前職の源泉徴収票で金額を確かめて、新しい会社の年末調整に含めます。源泉徴収票を出せないと年末調整はできず、自分で確定申告をして精算します。年内に再就職しなかった人も年末調整は受けないため、税金を納め過ぎていれば確定申告(還付申告)で取り戻せます。
転職した年の年末調整はどっちの会社がやる?
年末調整は、1年間の給与から天引き(源泉徴収)された所得税を、年末に正しい金額に合わせる手続きです。国税庁によると、年末調整の対象は、年末調整を行う日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出している人で、12月に行う年末調整の対象には次の2つが含まれます(国税庁 No.2665)。
- 1年を通じて勤務している人
- 年の中途で就職し、年末まで勤務している人
つまり、転職した年の年末調整をするのは、年末(12月)に在籍している新しい会社です。前の会社は、年の途中で退職した人の年末調整を原則として行いません(12月の給与を受け取ったあとに退職した場合などの例外があります)。
なお、その年の給与の総額が2,000万円を超える人は年末調整の対象外で、確定申告が必要です(国税庁 No.2665・No.1900)。
前職の給与も合わせて精算する
国税庁は、中途就職者の年末調整について「ほかの会社などに『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』を提出して支払を受けた給与がある人については、それらの給与を含めて年末調整を行う必要があります」としています(国税庁 No.2674)。
新しい会社は、前の会社で支払われた給与の金額・天引きされた所得税・社会保険料を、前の会社が出した「給与所得の源泉徴収票」で確かめます。そのため、転職した人は前職の源泉徴収票を新しい会社に出すことになります。
前の会社で扶養控除等申告書を出していなかった給与(たとえば、副業先のように「乙欄」で天引きされていた給与)は、No.2674が年末調整に含めるとしている給与には当たりません。2か所以上から給与を受けていた人は、確定申告が必要になる場合があります(国税庁 No.1900)。
年末調整に必要なもの(転職した人)
転職した人が新しい会社に出すものは、主に次のとおりです。書類の名前や出し方(紙かシステムか)、締め切りは会社ごとに決まるので、社内の案内に従います。
| 出すもの | いつ・どんなとき | 根拠・ポイント |
|---|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 入社のとき(年末調整を行う日までに) | 出していることが年末調整を受ける条件(No.2665) |
| 前職の給与所得の源泉徴収票 | その年に前の会社から給与を受けた人 | 前職分を含めて精算するために使う(No.2674) |
| 基礎控除・配偶者控除等などの申告書 | 年末調整の時期 | 配偶者控除などを受けるとき(No.2672) |
| 保険料控除の申告書と控除証明書 | 生命保険料・地震保険料などを払っている人 | 保険会社から届くはがきなどを添える |
控除の金額は税制改正で変わることがあり、2026年(令和8年)分にも改正が入っています(たとえば国税庁 No.2672の配偶者控除の表には「令和8年分の所得税から適用される金額」と注記があります)。金額は会社の案内と国税庁の最新の情報で確かめてください。生命保険料控除のしくみは、金融研究所の生命保険料控除はいくら戻る?計算方法と2026年の上限6万円で詳しく解説しています。
前職の源泉徴収票はいつもらえる?
給与所得の源泉徴収票は、給与を支払ったすべての人に交付することになっていて、交付の期限は次のとおりです(国税庁 No.7411、所得税法第226条)。
- 年の途中で退職した人:退職の日以後1か月以内
- それ以外の人:翌年の1月31日まで
受け取る人が前もって承諾しているなど一定の条件のもとでは、紙ではなく電子データで渡されることもあります。その場合でも、本人が求めれば紙で交付しなければならないとされています(国税庁 No.7411)。
年末調整の締め切りは新しい会社が決めるので、間に合うように退職するときに「源泉徴収票はいつ、どこに届くか」を前の会社に確かめておくと慌てずに済みます(当サイトの整理)。
源泉徴収票が届かない・なくしたとき
まずは前の会社(人事・総務の担当)に連絡して、交付や再発行をお願いします。それでも交付の期限(中途退職は退職後1か月)を過ぎても交付されない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます(国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」)。
- 出せる時期:源泉徴収票の交付期限を過ぎたあと、いつでも
- 出し先:住所地など納税地を管轄する税務署(e-Taxでも書面でも可)
- 添えるもの:給与明細があればその写し、勤務先に交付を求めたことがわかる書類など
この届出は「交付されなかった」場合の手続きで、一度受け取った源泉徴収票をなくした場合の再発行は対象外です。なくした場合は、前の会社に再発行を頼みます。
間に合わない・出せないときは確定申告
前職の源泉徴収票を新しい会社に出せない場合、国税庁は「年末調整を行うことはできず、その人が確定申告により」所得税などを精算するとしています(国税庁 No.2674)。
このとき、新しい会社の給与については年末調整が行われないため、翌年に自分で確定申告をして、前の会社と新しい会社の両方の源泉徴収票をもとに1年分の税金を精算します。源泉徴収票が遅れて届いた場合の扱い(年末調整に間に合うか、やり直せるか)は会社によって変わるので、届きしだい新しい会社の担当者に相談します。
年内に再就職しないときは還付申告
年の途中で退職し、その年のうちに次の会社に入らなかった人は、年末調整を受けません。毎月の給与から天引きされていた所得税は年末調整で精算されるはずのものなので、年末調整を受けないままだと納め過ぎのまま残っていることがあります。
国税庁は、還付申告ができる例のひとつとして「年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき」を挙げています(国税庁 No.2030)。
- いつ出せる?:還付申告書は、確定申告の期限(原則翌年3月15日)とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間出せます(国税庁 No.2030)。
- 必要なもの:前の会社の源泉徴収票、控除を受けるための書類(国民年金・国民健康保険の保険料の領収書など)。
- 還付がない場合:源泉徴収票の源泉徴収税額が「0」の人は、申告しても還付される所得税はありません(国税庁 No.2030)。
退職したあとに自分で払った国民健康保険料や国民年金保険料も、社会保険料控除の対象になります(国税庁 No.1130)。退職後の健康保険と年金の切り替えは退職後の健康保険|任意継続・国保・扶養の選び方と期限で整理しています。また、医療費控除は確定申告(還付申告)で受ける控除の例として国税庁 No.2030に挙げられているので、医療費が多かった年は金融研究所の医療費控除はいくら戻る?計算方法と対象・10万円以下もあわせてどうぞ。
退職金は年末調整に入る?
退職金(退職所得)は、給与とは分けて税額を計算するしくみです(国税庁 No.1420)。
- 「退職所得の受給に関する申告書」を出している人:支払う会社が税額を計算して源泉徴収するので、原則として確定申告は不要です。
- 出していない人:退職金の20.42%が源泉徴収され、本人が確定申告をして精算します。
退職金の源泉徴収票(退職所得の源泉徴収票)も、退職後1か月以内に交付されます(国税庁 No.7421)。給与の源泉徴収票とは別の書類なので、新しい会社に出すのは給与の源泉徴収票のほうです。退職金にかかる住民税については退職後の住民税|一括徴収・普通徴収はいつ?払い方と金額でまとめています。
転職した年のチェックリスト
- 退職するとき:前の会社に、源泉徴収票の届け先(住所・メール)と時期を確かめる。
- 入社するとき:新しい会社に扶養控除等申告書を出す。
- 退職から1か月たっても届かない:前の会社に連絡。それでも届かなければ税務署に不交付の届出。
- 年末調整の時期:前職の源泉徴収票と、控除の申告書・証明書を締め切りまでに出す。
- 出せなかった・年内に再就職しなかった:翌年に確定申告(還付申告は翌年1月1日から5年間)。
これは当サイトの整理です。退職から入社までに日が空く人は、失業保険の受け取り方も失業保険 自己都合の給付制限は1か月|いつから・何日分で確かめておくと安心です。
まとめ
- 転職した年の年末調整は、12月に在籍する新しい会社が行う。
- 前の会社で扶養控除等申告書を出して受けた給与は、前職の源泉徴収票で確かめて年末調整に含める。
- 前職の源泉徴収票の交付期限は退職の日以後1か月以内。届かなければ前の会社に連絡し、それでもだめなら税務署に不交付の届出。
- 源泉徴収票を出せないと年末調整はできず、自分で確定申告をして精算する。
- 年内に再就職しなかった人は年末調整を受けない。納め過ぎなら還付申告(翌年1月1日から5年間)で取り戻せる。
出典・注意書き
基準日:2026年11月時点(各ページは2026年11月5日に当サイトが閲覧して確認。タックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令等に基づく内容)
- 国税庁 No.2665「年末調整の対象となる人」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2665.htm
- 国税庁 No.2674「中途就職者の年末調整」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2674.htm
- 国税庁 No.2672「年末調整で配偶者控除または配偶者特別控除の適用を受けるとき」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2672.htm
- 国税庁 No.7411「『給与所得の源泉徴収票』の提出範囲と提出枚数等」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7411.htm
- 国税庁 No.7421「『退職所得の源泉徴収票』の提出範囲と提出枚数等」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7421.htm
- 国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100017.htm
- 国税庁 No.2030「還付申告」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
- 国税庁 No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁 No.1130「社会保険料控除」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130.htm
- 国税庁 No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
ご注意
- この記事は、転職した年の年末調整と確定申告の一般的な仕組みを、国税庁の公式情報をもとに整理したものです。個別の税額の計算や、確定申告が必要かどうかの判断をするものではありません。個別のケースは、勤務先の担当者、住所地の税務署、または税理士にご確認ください。
- 年末調整の書類の名前・出し方・締め切りは会社ごとに異なります。
- 税制は改正されることがあります。手続きの前に国税庁の最新の情報をご確認ください。
- 「退職時に源泉徴収票の届け先を確かめる」などの段取りと「転職した年のチェックリスト」は当サイトの整理です。



